燃え上がる炎は恐ろしくも美しく見えた。あれはまるで・・・夕焼けの空のようで朱色と橙色の混ざった鮮やかな色。

いつだっただろう?母上が言っていた。


「――――大丈夫。きっと何もうまくいくわ。貴女は一人じゃないのよ。」

そう言いながらも、母上は流行り病で身罷った。
わたしに微笑みかけながら。大丈夫よと・・・。

わたしはやっぱり一人ぼっちなんだな・・・。




「腹減ったぁ〜。」

前田利家は、家路へ急いでいた。信長の言いつけで京まで出ていたので久しぶりの帰宅であった。

「まつに会いたいなぁ〜・・・・ん?」

利家は妻のまつのことを考えてうっすら笑みを浮かべ、空を見上げる。もう日も落ちてしまいそうで、空は綺麗な茜色だった。
すると、ここからは見えにくいが少し道を外れたあたりの場所から煙が出ているのに気が付いた。
―――嫌な予感がする。
なにやら不吉な予感を胸に抱きつつ、すぐさまその地に向かった。


先ほど煙をみたであろうという場所には小さな焼け跡があった。そこはおそらく民家だったのであろう。無残にもこげて横たわった黒い柱がそれを示していた。

「・・・こりゃあひどいな・・」

そうしてあたりを見回す。全焼だった。顔をしかめた利家が見たのは、焼け跡のすぐ近くに横たわった布の塊。
近くへ寄ると、それが人であることを確認した。

「――!!おいっ!お前、大丈夫か?!」

驚いてそれを抱き上げると、薄汚れた着物の下にはまだ幼い稚児が顔をみせた。
利家はそれを抱えたままその場を後にした。





暖かい匂いがする・・。なんだろう?どこか懐かしい・・


わたしは死んだはずなのに・・・

何故こんなにも心地良いのだろう?

目を覚ましたくない・・そう思ったけど・・


声が聞こえた。
聞きなれない声。


わたしを・・呼んでいるの?―――――


「まぁ。気がつきましたか?」

高くてきれいな声をかけられ、そちらを見つめた。にこりと微笑むその姿は心に温かさえ感じた。

「貴方、名前は?」
「・・・りく」
「わたしはまつというの。さぁさ、早く湯浴みをしましょうね。傷口もきれいにしなくては。」

てきぱきと仕度をはじめるまつを見ながら、いったい何故自分がここにいるのだろうか、記憶の糸をたぐるように記憶を整理してみる。しかし思い出すのは自身の名と優しい誰かの微笑みだけだった。
記憶の糸が何処かでぷっつりと切れたような心境で自分が今まで何処で育ち、何をしてきたか。そんなことすら思い出せなかった。


わたしは誰なんだろう―――










念願の夢小説です。
まったりと更新してゆきますー。よしなに。